公正証書
公正証書
公正証書とは、準公務員としての扱いを受ける公証人が作成する公文書のことをいいます。公正証書は、特別な効力(下記1.参照)が認められるため、契約だけでなく離婚や遺言など将来トラブルが予想されるような案件で、広く利用されています。
1.公正証書の効力
- (効力1)執 行 力
執行力とは、カンタンに言えば財産の差押などができる効力のことです。通常は、『被告は原告に金○○万円支払え』という判決などを得て、段階的に強制執行に踏み込みますが、一定の要件を備えた公正証書であれば、迅速に執行力が与えられ、これを根拠に強制執行を行うことができます。
- (効力2)証 拠 力
公正証書は、一般人が作成する契約書などの私文書と違い、公文書ですので、内容についてきわめて強い証拠価値を持ちます。『契約した覚えはない!』『文書は偽造されたものだ!』と主張することは、まず難しいでしょう。
- (効力3)公 証 力(=確定日付を得られる)
確定日付とは、ある文書がその日に存在していたことを証明する日付のことですが、公正証書に記載された日付も確定日付の1つです。つまり、公正証書の作成によって確かにその日に公正証書が存在したという紛れもない事実が証明されることになります。
- (効力4)安 全 性
公証人は、法律に関する知識と経験を有しており、内容に法律違反がないか?無効な法律行為はないか?などを事前に確認したうえで、公正証書を作成します。そのため内容が無効ということは、ほとんど考えられません。
また、公正証書の原本は、公証役場に20年間保管されますので、偽造・変造などの心配はなく、請求すればいつでも謄本を交付してもらうことができます。
2.執行力を有する公正証書(執行証書)の要件
【要件1】 「一定」 の 「金銭の支払い」 を目的とする請求である
(1) 金銭の支払い
「アパートから出ていけ!」「家の名義(登記)を移せ!」などの請求には、執行力が認められません。つまり、いくら公正証書にしても、強制的に人を退去させたり、物を回収したりすることはできないのです。
なお、法律は、金銭の支払いのほかに代替物や有価証券の給付を目的とする請求についても認めています。代替物とは、種類や性質が同じ物のことで、新品のテレビや缶ジュースなどのように、どこのお店でも同じように購入できるものです。
(2) 一定
「金100万円を支払う」「金5万円ずつ10回にわたって支払う」など公正証書に金額そのもの、または、金額を計算できるようなものが記載されていなければなりまえせん。
なお、代替物や有価証券の給付を目的とした請求の場合は、一定の数量が明記等されている必要があります。
【要件2】 債務者が直ちに強制執行に従う旨の記載がされている
「私が違反した場合は、強制執行を素直に受け入れます」という内容が記載されていなければなりません。例えば、「第○条 甲は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した」などの条項が公正証書の末尾に記載されます。
3.公正証書の主な利用例
公正証書は、金銭の支払いに関する契約について最も有益とされていますが、その他トラブルを防止する意味で様々なシーンで利用されています。
① 契約に関する例
☞ お金を貸し借りする契約 ・・・ 金銭消費貸借契約
☞ 借金の支払い方法やその額を明確にする契約 ・・・ 債務弁済契約
☞ 土地や建物を売買(賃貸借)する契約 ・・・ 不動産売買(賃貸借)契約
☞ 一定の期間だけ借地権が発生する契約 ・・・ 定期借地権設定契約
☞ 判断能力の低下(認知症など)に備え後見人を決める契約 ・・・ 任意後見契約
② 遺言・相続に関する例
☞ 生前に相続財産の割合や遺産の分割方法などを決めておきたい ・・・ 遺言書
☞ 延命治療を望まず、人間の尊厳を保って自然な死を迎えたい ・・・ 尊厳死宣言
☞ 相続人間で話し合った遺産分割の内容をまとめておきたい ・・・ 遺産分割協議
③ 離婚等に関する例
☞ 離婚の合意、養育費・慰謝料の支払方法などをまとめたい ・・・ 離婚給付等契約
☞ 浮気相手に対する慰謝料について示談をしたい ・・・ 和解契約
④ その他
☞ 権利義務に関係のある事実について証拠を確保しておきたい ・・・ 事実実験
・特許権の侵害されている状況
・亡くなった人名義の銀行の貸金庫の中身
・土地の境界争いに関する現況